おとななこども
「大変でしたよ、ここへくるのは」

会長は息を吐いた。

「バレンタインデーですものね」

あたしは箱をお弁当のそばに置いた。

会長のことだ。

お昼休みもチョコ片手に女子たちに追いかけ回されたのだろう。

「会長、チョコが好きなんですよね?

たくさんもらえてよかったじゃないですか」

あたしは、一体何を言っているのだろう?

口から出てきたのは、かわいさのカケラもない言葉だった。

「僕が喜んでいるとでも、言いたいのですか?」
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