おとななこども
きっと、あのことだ。

僕はため息をつきたいのを我慢した。

「わかった。

今帰るからね?」

「んー」

百花はそれだけ返事をして電話を切った。

僕は携帯電話をブレザーのポケットにしまうと、窓に視線を向けた。

平岡さんと後輩はまだ練習を続けている。

最後まで見ていたいところだけど、仕方がない。

僕は窓から離れた。

彼女のあの笑顔を僕のものにしたい。

今の彼女は、完全にご機嫌ななめだから。
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