先生の「特別」にしてくださいっ!
「俺は今、
実家を出て一人暮らしをしてるけど、
それは別に、
家族が嫌だから家を出たわけじゃない。」

先生はそう話し出した。
私は黙って聞いている。

「母親はもともとあんまり家にいないし、
ほぼ、兄貴と二人で暮らしてる状況で、
俺が言うのもあれだけど、
俺たち兄弟は結構仲の良いほうだと思う。」

話を聞くかぎりそんな気がする。

「この前、俺が風邪引いた時だって、
一人にすると危なっかしいから、
帰って来いみたいなこと言われたし。」

ああ。
あの兄貴なら確かにそんなこと言いそうだ。
納得してしまう。

「だからつまり、何が言いたいかと言うと、
俺は自分がここにいたいから、いるわけ。」

「ここに、いたいから…」

私は言葉の続きを待つ。

「滝野もさ、ここに、いたいんだろ?」

ドキッ…
その通りなんだけど、
その理由のことを考えてドキッとしてしまう。

「ここにいたいなら、ここにいれば?」
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