先生の「特別」にしてくださいっ!
「凛!グッジョブ!すごく良かった!」

舞台袖にはけると、
主人公のジャン・バルジャン役である
晶子先輩が私を褒めてくれた。

だけど、
ソロを歌い終えたばかりの
私はまだぼーっとしていて…

「りーん!お疲れ!
前より上手くなったんじゃない?
私、少し泣けちゃったよ。」

少し涙目になっている雪乃が
私に声をかける。

「あ…ありがとう。」

ようやく、ぼーっとしてた頭が覚醒してきた。

「いつまでも、
ソロを歌い終えた余韻に
浸ってんじゃねーぞ?たきのり。
まだ、死ぬ場面残ってるかんな!」

彩音に言われる。

そうだ。
まだ舞台が終わったわけじゃなかった。

「エポニーヌ、そろそろだよ!
よろしく!」

マリウス役の友達に言われて見ると、
もう私の出番が近い。

いつまでも、エポニーヌに想いを馳せて、
詩的なことを考えてる暇はないんだった。

「おう!がんばるよ!」

次はエポニーヌが死ぬ場面。

マリウスに看取られて、
エポニーヌは最期に幸せを感じて死んでいく。

エポニーヌの幸せのために、
私もやりきらねば、ならぬのだ!
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