先生の「特別」にしてくださいっ!
「彩音さん!大丈夫ですか!?」

雪乃は一瞬で連れてきた。
剛先生、と
その弟を。

「ここ…舞台、裏…静かにして…」

1曲弾き終えた彩音は
辛そうにしながらも、剛先生を咎める。

「何言ってるんですか!早く病院に…」

「薬…飲んだから、へいき…」

「ダメですっ!
…って彩音さん!?」

彩音は再び、ピアノを弾く。
舞台は傷ついたマリウスのソロからの
コゼットとのデュエットだった。

これで、彩音が弾く曲は終わる…

「弾かせて、あげてください。」

私が剛先生に言う。

「え…でも!」

「ピアノの音を聞いてください。
彩音はこんな状態でも
完璧に弾いてるんです!」

「あ…」

剛先生は驚いている。

「今ここで止めたら、
彩音は一生後悔しますよ?」

「だけど、止めなかったら
彩音さんは、危ないかもしれ…」

「剛先生がいるでしょ!!
主治医なんでしょ!?
ここに来たのはなんのため?
この曲が終わったら
病院に連れて行っていいですから!」

自分でもむちゃくちゃを言っているのは
わかるけど、止まらなかった。
< 340 / 418 >

この作品をシェア

pagetop