略奪ウエディング
***
「結婚したら課長のマンションに住むのよね?」
会社の帰りに寄った洋食屋で彼女がパスタを巻きながら聞いてくる。
「え?…ああ、そうだね」
俺は躊躇いながら曖昧に答える。
「…やっぱり、もう少し後でもいいですよ…、結婚は」
言いながら彼女はフォークをテーブルに置いた。
「ん?どうして?」
「だって…」
彼女の顔から笑みが消えたのは俺の態度が原因だと分かる。
「あ、違うよ。仕事のことを考えてて」
慌てて笑って見せた。
「そうですか。無理…していないですか?春だったら、もうじきだから。もう少し後でも…」
引け腰の彼女の言い方にドキッとした。
「無理なんてしていないよ。どうしてそんな事を言い出すの」
梨乃の口から後ろ向きな言葉を聞いたのは初めてだった。
最近の彼女を見ていて、どうしても思ってしまうことがある。梨乃は俺とこうなってしまったことを後悔し始めているのではないか。東条を裏切ったことに対して感じている罪悪感に、耐え切れなくなってきているのではないか。
そう思いたくはないが、どうしても当てはまってしまうのだ。
そんな彼女にこれ以上不安や迷いを感じてしまう材料を与えたくはない。そう思ってしまうからこそ、俺は彼女に転勤の話を伝えられないでいた。
「結婚したら課長のマンションに住むのよね?」
会社の帰りに寄った洋食屋で彼女がパスタを巻きながら聞いてくる。
「え?…ああ、そうだね」
俺は躊躇いながら曖昧に答える。
「…やっぱり、もう少し後でもいいですよ…、結婚は」
言いながら彼女はフォークをテーブルに置いた。
「ん?どうして?」
「だって…」
彼女の顔から笑みが消えたのは俺の態度が原因だと分かる。
「あ、違うよ。仕事のことを考えてて」
慌てて笑って見せた。
「そうですか。無理…していないですか?春だったら、もうじきだから。もう少し後でも…」
引け腰の彼女の言い方にドキッとした。
「無理なんてしていないよ。どうしてそんな事を言い出すの」
梨乃の口から後ろ向きな言葉を聞いたのは初めてだった。
最近の彼女を見ていて、どうしても思ってしまうことがある。梨乃は俺とこうなってしまったことを後悔し始めているのではないか。東条を裏切ったことに対して感じている罪悪感に、耐え切れなくなってきているのではないか。
そう思いたくはないが、どうしても当てはまってしまうのだ。
そんな彼女にこれ以上不安や迷いを感じてしまう材料を与えたくはない。そう思ってしまうからこそ、俺は彼女に転勤の話を伝えられないでいた。