略奪ウエディング
「そんな可愛い奥様に伝言。来週、送別会をしますから来てねって伝えてください」
「送別会か。分かった、ありがとう。喜ぶよ。寂しがっているから」
俺が言うと牧野はニヤッと笑った。
「寂しさを慰めるのは旦那の仕事でしょ~。頑張ってください」
「お前。言動がアカマメに似てきているぞ」
「うわ。やばっ。マジですか」
「マジマジ。はははっ」
…送別会か。喜ぶだろうな。
昨日、俺の部屋にもらった花束を活けて眺めていた彼女の姿を思い出す。
俺も、…茜に連絡して急いでもらわないと。そう考えながら、後半の会議のために立ち上がった。
――「ただいま、梨乃」
玄関から声をかけると彼女が部屋の中から飛び出してきた。
「悠馬っ」
俺に向かって飛び上がり抱きつく。
そのまま彼女を抱え上げて言う。
「梨乃。重い」
「え、やだ」
俺の冗談を真に受けて降りようとした彼女を抱き直す。
「いや。下ろして…」
「下ろさない。可愛い。…好き」
「重いんでしょ…」
「嘘だよ」
そのまま唇を重ねる。
こんな俺は誰にも見せられない。部下に知られたら会社に行けなくなるな。俺はそう思いながらも彼女の耳にもキスをしていた。