略奪ウエディング
Final episode〜愛と祝福に包まれて〜
私は彼に連れられて一階奥の大会議室の前に立った。
「さ、扉を開けてみて」
悠馬に言われてそっと扉を開く。
「………わあ……」
驚く私の目に飛び込んできた光景は、披露宴会場だった。
金屏風にたくさんの来賓テーブル。
ここが会社の会議室だなんて信じられない。花がところ狭しと飾られ、壁には薄桃色のシフォンカーテンが張り巡らされており、あちこちに設置してあるライトが会場を眩しく照らしている。
「驚いた…?課の皆でセッティングしたんだ。常務の許可は取ってある」
「…常務…?」
あ。…酔って帰ったあの日…。
「さ、どうぞ。今日は君が主役だよ。ま、表面上は俺だけど」
皆が流れ込んできてそれぞれの席に座る。
すると料理を持ったホテルの給士係の人がたくさん会場に入ってきた。
「…悠馬…、これ…」
私は驚いて隣の彼の袖を引っ張った。
「せめて、気分だけでもね。本番はないから。でも、なかなかでしょ?」
白のタキシード姿の彼は、息をするのを忘れそうになるくらいに綺麗。
その笑顔を惜しみなく私に向けて、なかなか私を夢から覚めさせてはくれない。