略奪ウエディング
「課長の噂を聞かない日はないですから。嫌でも耳に入ってくるんです」
「ふーん…?」
課長は全然分かっていない。
普段から自分がどれだけ女性の注目を集めているのか。
先ほどのキスの後の艶のある視線を思い出しただけでも鳥肌が立ちそうだ。
あんな目で見つめられたならきっと私が男性であってたとしても課長に恋してしまうわ。
それなのに自信がないだなんて。私が課長なら絶対に思わない。
「後悔なんてしていません。課長が信じてもいいと言ったんですよ」
「そう。俺がそう言った。君を奪うことがいけないことだと分かっていながら。今から来る彼は、きっと俺を一生許さないだろうね…。こんな風に…君を奪ってはいけないのかも。冷静になれば分かることだ」
そう言って課長は突然カタッと立ち上がった。
「課長!」
私は焦って悲痛な声を出した。
課長がこのまま帰ってしまう…!もともと信じがたい展開ではあったが、どうかこのままここにいてほしい。
今にも泣き出しそうな、驚愕の目線を課長に向ける。