略奪ウエディング
欲望と拒絶
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「課長!やりました!西区開発の土地の全域譲渡の権利を取りましたよ!」
その日の夕刻。
そろそろ業務を終わろうとしていたら、一人の男性社員が走って外回りから帰ってきた。
皆は一目散に課長の元へと駆けていく彼の様子に注目して作業の手を止めている。
「西区?本当か!よくやったな!」
課長は立ち上がって彼をねぎらった。
「はい!課長に言われた通りの進め方を説明したら、他社とは違うと言ってくださって」
私の一つ年下の西口くんが興奮気味に一気に課長に説明する。
「そうか。俺じゃなく、君の誠意が通じたんだよ。よかったな」
「はい!ありがとうございます」
その会話を聞いていた皆が、一斉に彼に拍手をする。
「ありがとうございます!」
西口くんは振り返り、皆の方を向くとペコリと頭を下げた。
「よし、じゃあ今日は久々の『臨時飲み会』だな!参加者はもう片付けろよ~」
課長の号令に皆は一斉にデスクを片付け始める。
「あれ?梨乃、飲み会だよ?」
そんな中、パソコンに向かったままの私を見てスミレが声をかけてきた。