略奪ウエディング
三・結婚準備
永遠の輝き
パソコンのキーボードに手を乗せたまま、ふと動きを止める。
そのままぼんやりと考える。
――課長の息遣い…、指先の温度…、肌の感触…、潤んで光る瞳。
「梨乃」
隣からスミレが呼んでいる…。
…でも…。
「ちょっと梨乃!グラフの方はできたの?早くしないと次の作業が詰まってくるよー」
「…あ…」
彼女の言葉にようやく私は正気に戻った。
「ご、ごめん。すぐに…」
慌てて仕事を始めた私を見てスミレはニヤニヤしながら耳打ちしてきた。
「さては仲直りしたのね?さぞや濃厚な週末を過ごしたんでしょうね」
ボワッと顔が火照る。
「やっ!違うわよ!?」
あ。
私の声の大きさに数人が私を見た。
「ちょっと、梨乃」
冷やかしていたスミレに逆にたしなめられる。
「やだ…私…」
「よく分かったわ。よかったわね。ただぼんやりしないでよ。旦那様にも迷惑かけるんだからね」
スミレはクスクスと笑って言った。
私は彼女から目を逸らして赤い顔のまま俯いた。