略奪ウエディング
「あ、私…」

課長の怒ったような言い方に私は恥ずかしくなり顔を下げたまま、上げることができなかった。

「急いで。終わったらすぐに矢崎じゃなく俺に回して」

「はい…」

課長がそのまま去っていく。

どうしよう。浮かれて仕事をおろそかにしてしまうなんて。
自分の呆れた状態に、気持ちが沈んでいく。

課長を怒らせてしまった。
こんな私をどう思ったかしら。
どうしよう。

私は急いで作業を進めた。課長に幻滅されたくない。集中しなければ。



――「じゃあ私、帰るわね。あんまり落ちこまないでね」
定時になり、スミレが私に声をかけてきた。

作業の遅れにより、私のデータはスミレを飛ばして課長に直接引き継がれることとなった。
私は残業をしながらあと少しのノルマを仕上げることとなった。

「うん、大丈夫。お疲れさま」

私はスミレにそう言ってから、仕事の続きに取りかかる。


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