略奪ウエディング
――「あら。悠馬?…悠馬じゃない?」
ん?
突然声をかけられて振り返った。
「え、茜…?何でここに…?」
お互いに驚いた顔で見合う。
「やっぱり!悠馬。久しぶりじゃない!」
茜は、早足で歩み寄ってきた。
「本当に茜?驚いたな」
俺は胸に抱いていた梨乃を離して茜と向き合った。
「びっくりしたわ。まさか金沢で会うなんて」
「そうだな。俺は今こっちに転勤に」
「転勤?やだ、左遷?」
「ばか。うちの本社はこっちだよ」
「あ、そうだったわね。私も今週はこっちで仕事なの。展示会で」
「へえ」
そこまで言ったとき、夢中で話す俺と茜の様子を、梨乃が唖然と見ているのに気付く。
「梨乃。彼女は三浦茜さん。昔の……彼女」
隠してもしょうがない。俺ははっきりと告げた。
今は何もないのだから、問題はないだろう。
梨乃は微かに笑って「こんばんは」と小さな声で言った。
「彼女は?まさか、恋人?…ではないか」
そう言った茜に答える。
「え。婚約者だけど?」
俺がそう言うと、茜は驚いた顔で梨乃を見た。