略奪ウエディング
結婚式の行方
――「月瀬建託、営業第二課の課長をしております、片桐悠馬と申します。今日は梨乃さんとの結婚のお許しをいただきたくこうしてご挨拶に参りました」
玄関で梨乃のご両親に頭を下げながら言う。
「わお、イケメ~ン!マジで!?お姉ちゃん、やるわね」
「梨花!あっちに行きなさい」
中学生ほどの妹さんの顔を、お母さんが部屋に押し込めてドアをバン!と閉めた。
「ようこそ。どうぞ、お入りください」
お父さんに促され中へと足を踏み入れる。
「失礼致します」
靴を揃えて立ち上がると、梨乃が俺を横から見ていた。
ご両親はもう、部屋へと入って行って二人だけだ。
「あの、…もしかしたら失礼なことを言うかもしれないから…」
不安そうな彼女の手を握る。
「大丈夫、分かってる。彼のことがあるから反対されてしまうかもしれない。でも、信じて。大丈夫だから」
そう言って笑いかけると、彼女も微かに笑った。
「あの~、お兄様、お姉様。パパとママが待ってるけど~…」
梨花さんが再び顔を出して俺たちを見ていた。
「あ」
俺は慌てて彼女の手を離し、部屋へと向かった。