略奪ウエディング
重なる嘘
翌日。
ぼんやりとした頭で出社した私は更衣室で制服に着替え、自分の課に向かった。
昨日の東条さんの涙が頭から離れなかった。
今さら考えてもどうしようもないことは分かっているが、責任を感じ、気持ちは時間が経つたびにどんどんと沈んでいった。
浮かない顔で課に足を踏み入れる。
パーン!!パーン!!
大きなクラッカーの音と、カラフルなテープが舞う光景にうつろな気持ちが吹き飛んだ。
何!?
驚いて顔を上げると、課の皆が私を取り囲んでいた。
「え?」
「せーの…、結婚、おめでとう!!」
大きな声で揃って言われる。
え?な…。
あまりの唐突さに口を開いてポカンとしてしまった。
「梨乃!あんた!ずるいわよ!片桐課長は独り占め禁止物件だったのに!梨花ちゃんからメールがきたの!正式に認められたって。隠してもバレてるのよ!」
「そうよ!絶対許さないからね!」
「社内一のイケメンを奪われてこれから何を楽しみに会社に来たらいいのよ!」
同僚たちが口々に言う。
「ひでぇな!俺たちがいるだろ!」
「そうだよ!」
抗議する男性たちに彼女たちも言い返す。
「だめよ!雑草に用はないわ。温室育ちの綺麗な花がいいのよ!」
「どういう意味だよ!」
私の目の前で男女によるバトルが始まろうとしている。
「あの、待って…何…」
私が止めようとすると、「こら、君たち、何してる」と言いながら課長が出社してきた。