略奪ウエディング
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病室のドアをノックすると、中から「はい」と彼の声がした。
私がドアを開けて部屋に入ると東条さんはベッドの上に座った体勢で私を見た。
「梨乃ちゃん」
「起き上がってていいんですか?調子はいかがですか」
言いながら彼のそばに近付く。
東条さんは驚いた顔で私を見ていたが、やがてふわっと笑った。
「うん、骨が二ヶ所折れているだけ。あとは頭の検査とか。もう少し入院してないとダメみたいだ」
「良かった、元気そうで。心配していたんですよ」
私はほっとしながら笑い返した。
「あ、これを。雑誌と、お菓子と、飲み物と…」
私は持っていた紙袋の中身を出して見せる。
「……梨乃ちゃん。…もう来ないでほしいと言ったと思うんだけど…」
東条さんの言葉に私は見舞品を出す手を止める。
「…同情とか…迷惑だから…」
彼は呟きながら窓の外に目を遣った。