不器用桐谷さんと桜井くん
「髪も凄くきれい!!」
女の子や男の子に囲まれて、帰るに帰れない。
はぁ…。
「ごめん、私帰りたいの。」
隣にいた祐希に帰ろと言って、歩く。
「心春、大変だねぇ。」
「うん…。」
とため息をひとつ。
すると、祐希が制服の裾をつかんで
「あれなんだろ~?」
と廊下の奥を指差した方を見ると、人だかりができていた。
その大半が女の子で、なにやらキャーキャー騒いでいる。
うるさいなぁ…。
こういうのは、関わらないようにしよう。
踵を引き返して、別の階段から帰ろうとする私に祐希は
「行ってみようよ!」
と、輝かせた瞳を見せて私の手を引っ張っていく。
まじですか……。
「はいはい。」
あきらめて私は、祐希についていくと
「桜井くぅ~ん、アドレス交換しよ~?」
「うん、いいよ。」
「駿、今日空いてるかぁ?」
「今日?空いてるよ」
大勢の人の輪の中には、男の子が一人いた。