My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
そんな昔の事思い出しながら、伏せた瞳を一向に上げないホリスを目に映す
すると
「――いいだろう」
「え?」
「お前の監視を和らげる」
急に顔を上げて話し出したホリスの言葉に拍子抜けする
こんなにもあっさりと承諾してくれると思ってもいなかったから
茫然と立ち尽くす俺を横目に、ヒラリと衣を翻して俺の隣をすり抜けたホリス
銀色の髪が視界の隅に入って、慌てて振り返る
「いいのか?」
「何を申す。そなたから言いだした事であろう」
そう言って、小さく鼻で笑ったホリス
そして、音も無くその場から離れていく
「ありがとう」
余りにも驚いて、お礼を言い忘れそうになって慌てて声を張る
すると、微かに振り返りはしたが
何も言わず、そのままホリスは宮殿の中へ消えて行った
静寂だけを残して