My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ







市場は今日も賑っていた



正直あんな事があって、民達が脅えて外には出ないんじゃないかと心配していた

けれど今、目の前に広がるのは、あの日と変わらず活気に溢れた市場と

笑顔に満ちた民の表情



きっと、この国は俺が思っているより強い

あんな事で折れたりしない、強い心を持っている


なんだかそれが無性に嬉しくて、辺りを見渡しながら歩く

すると







「あっ! あの時のお兄ちゃん!」



聞き覚えのある、どこか舌足らずな声が聞こえた

ふっと声のした方に目を向けると、今にも転びそうな危なげな足取りでこちらに駆けてくる女の子が目に入る


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