My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
◇
「もう少し行った所で、民が見かけたそうだ」
大きな木に隠れて、小声でそう言うホリス
その言葉を聞いて、コクンと頷く
日が傾いてきた頃、俺とホリスはガスパルの残党の気配があるという、東の森へ来ていた
鮮やかな夕日の色と折り重なって
空が青く染まり、夜の訪れを感じさせている
こういった緊張感や、どこか得体のしれぬ高揚感は久しぶりだ
以前は息つく暇もないほど、戦に明け暮れていた
それが当たり前だと思っていた
それが自分の使命だとも
でも、ここに来てから自分が何者か分からなくなった
剣を無くしたら、自分には何も残らないと思って
酷く自分というものを見失いかけていた
だから、自分の生きる意味が欲しかった