My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
――いける
そう思って、静かに剣に手を這わす
ピリピリとした緊張感が俺を包む
ぐっと足先に力を入れて、柔らかい土に沈ませる
どこか生暖かいそれが、これから浴びるであろうものに似ていて、ゾクリと背が震えた
チラリと視線だけホリスに向けると、同意する様にコクリと頷いた
〝――危なくなったら、手助けしてやろう――″
先ほどのホリスの言葉を思い出す
それでも、目の前の2人の男を見て、ふっと笑う
こんなの、1人で十分だ――
その瞬間、駆けだす
風に乗って
どこか暗い赤に染まる世界で
剣の銀だけが、光る
まるで月の様だと思って、一瞬レイアの顔が浮かんだ
剣を抜いた音に気付いたのか、ガスパルの男が叫ぶ
それでも、今の俺の耳には届かない
何も