My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
倒れ込んだ男の荒々しい息遣いが世界に満ちる
汗と泥が混ざった黒い汗が、男の頬に流れる
激しく上下する喉元に、突きつけた剣が微かに当たっている
「――たっ助けてくれぇっ」
「お前はそう言った民に、情けをかけた事があるか」
両手を上げて悲願するガスパルにそう言う
男の顔から噴き出る様に汗が滲む
引きつった顔で、目を泳がせている
その姿を見て愚問だな、と思う
情け、など――こんな男がかけるはずなどないと思って
「仲間はどこにいる」
「し‥知らねぇよっ――ほっ本当だっ、信じてくれっ」
高揚のない声で、男を見下ろしながらそう問う
そんな俺を見て、今にも泣き出しそうな声で、そう言う男