My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
男の言葉の意味ができずに、眉間に皺を寄せる
そんな中でも脅えた様に俺を見つめるガスパル
そして
「――その目っ...!!」
「目?」
「殺したはずだ…なぜ…なぜ」
擦れた声が世界に響く
大きく目を見開いて、体を硬直させている
…目?
どういう事だ?
殺したとは、誰を?
もう一度、その言葉の意味を問おうとした時
強い風が吹く
辺りの葉が勢いよく舞う
その瞬間、飛び散る赤
目の前に広がる、血の海
ポタポタと滴る血が、波紋の様に広がる
視線を上げると、剣を片手に立つホリスがいた
銀色の髪を赤に染めて
美しい陶器の様な肌に血を飛び散らせて
俺と、首の無くなった男を冷たい目で見下ろしている
「ガスパルを甘く見るな。どんな卑怯な手を使ってくるか分からない」