My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
「――‥ありがとう。父さん」
どうにもこうにも、胸が詰まる
父の顔が見れずに、ぐっと奥歯を噛みしめた
「お前の人生だ。何を守るかは、お前が決めろ」
そんな俺を見て、またガシガシと俺の頭を撫でた父
どこか寂しそうな顔をして
「私はヴェントスに戻る。あそこは私の生きる場所だ」
「――あぁ、分かってる」
「どうも、ここの風は優しすぎて合わん」
「父さんには、あの強い風が合ってるよ」
やっと顔を上げて笑う事ができた
そんな俺を見て、父もいつもの様に笑う
――そうだ
巻き上げる様な、あの風が
強く逞しい父には合っている