My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
「グレイス? どうした、答えよ」
隣にいたホリスも気になったのか、一歩前に出て彼女の顔を覗き込む
すると、瞳を揺らした彼女がもう一度声を落とした
「ゲル様がっ‥お部屋にいらっしゃらないのですっ!」
その言葉を聞いて、意識を飛ばしそうになる
またか。と思って
ホリスも同じ事を思ったのか、目頭に手を当てて、小さく溜息を吐いた
――そう
ここ最近グレイスや俺達を悩ませている事
それは
父の脱走