My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
2人並んで少し離れた場所にいる父に歩み寄る
チラリと隣を盗み見れば、まるで鬼の様に恐ろしい顔をしたホリスがいた
そして
「――ここで何をしている」
ピクリとも動かずに、冷たい声で父に問いかけたホリス
相当怒っていると見受けられる
「見て分からぬか、剣の稽古だ」
それでも、そんなホリスにも動じずに
ニッコリと笑って、そう答える父
その光景に、ヒヤリと背が凍る
「父さん、グレイスには外に出る事は言った?」
「あぁ、思い立った時にいなかったから、言っていない」
「――この前の私の言葉は覚えているか」
首を傾げて、悪びれもせずにそう言う父に、ホリスが噛みつく
2人の温度差がスゴイ
「申し訳ないな。どうも物覚えが悪くて。まぁ、この年だ。許せ」
「――」
「お。そうだ、アレン。剣の稽古に付き合ってくれ。どうも腕が鈍ってきた」
爆発寸前のホリスに見向きもせずに、額に汗を光らせた父がご機嫌な様子でそう言う
チラリとホリスを見ると、微妙にプルプルと震えている
怒りで