My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ


だが、例え気づいたとしても、あの数相手では敵わない

不意をつかれれば、一瞬にして騎士達は殺される




「あの数では騎士達はやられます! 一時撤収させましょう!」

「だが! 王宮に籠れば、後はないぞ!」

「しかし、姫様っ! このままでは騎士達はやられます!!」



騎士のその言葉にぐっと唇を噛む

以前言っていたアレンの言葉を思い出す




――森を抜けられたら、勝機は遠のく




その意味は私も分かっている

森を抜ければ、後は平原と王宮しか残っていない

他国なら、戦の為に王宮に防壁を築いているのだろうが

この国はそういった装備が完全とは言えない



だから大軍相手に土地の利や奇襲をかけられるのは、あの広大な森しかない



だが



目の前に迫り来る大軍を前に、震える拳を強く握りしめた




「――撤収だ」



口から出た言葉は、どこか擦れていた
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