My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
雨
「姫」
短く呼ばれた声に、ふと我に返る
ゆっくりと空を見上げていた視線を声のした方に向けた
霧雨の中に佇む、銀色の騎士
今にも消えてしまいそうだと思って、少し心配になる
「こんな所で....お風邪を召されます」
それなのに、私の事を心配するホリスに思わず笑みが零れる
もっと、自分の事を考えろと思って
それと同時に、変わらないなと思って
「固い事を言うな。そなたと私の仲ではないか」
ゆっくりと近づいてきたホリスに小さく笑いかけて
また空に視線を向ける
月のない
空に