My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
聞いた事がある
様々な国の王家の石があるが
伝説の竜族の王家の石は、真っ赤な炎の色をしていると――
ゆらゆらと揺れる炎の石
その向こうに見えるのは、太陽をはめ込んだ様な黄金の瞳
すると、真っ直ぐに前を見つめたアレンがその口を開く
「俺の名は、アレン=グラディウス」
「――」
「竜族の王子だ」
真っ直ぐに伸びるその力強い声
世界を震わす程の、その言葉
「竜族の...王子..だと」
瞳を見開いて、アレンの姿を見つめるホリス
周りの騎士や大臣達も、同じ様に目を見開いて言葉を無くしている
「竜族の王子など...王家は皆滅びたのではないのかっ!」
「そうだっ! でまかせを言うでない!」
「待てっ..聞いた事がある―――竜族の王家は皆、その瞳は太陽を埋め込んだ様に、黄金に輝いていると。それが王家の証だと。黄金の瞳を持つ者など、この世界には、あの一族しかいない」
「――しかしっ」
「それに、あの石―――。伝説の通り、我が王家の石と同じものだ」
「まがいものではないかっ!?」
「この石には竜族の紋章が彫られています」
大臣の声に被せる様に、アレンの静かな声が部屋に響く
その声に合わせる様に、炎の様な真っ赤に燃える石に大勢の視線が集まる
そして、目にする
伝説の竜の紋章を――
途端に、静まり返る部屋
黄金の瞳
炎の石
王家の証―――
ユラユラと揺れる瞳を抑えきれずに、目の前のアレンを見つめる
すると、ゆっくりと私に歩み寄ってきたアレン
そして、肩から広がるローブを床に広げて、その場に跪いて私の手を取った
「今こそ、交わされた約束を果たそうぞ」