My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ






「―――アレン様ッ!」




あれから忙しなく部屋を出て、自室へ荷物を取りに行こうとした時、不意に声がかかった

駆け足だった足を止めて振り返ると、両手に荷物を持ったグレイスが駆け寄ってきていた




「グレイス。どうした?」




音も無く駆け寄ってきたグレイスに問いかける

急いで駆けてきたのか、肩で息をしている




「荷物をまとめておきましたわ」

「本当か? 助かるよ。今取りに行こうとしていたんだ」




見覚えのある荷物を持ったグレイスがニッコリと笑って、俺の腕にそれを渡す


すると、荷物を受け取った俺をじっと見つめる彼女

大きな瞳が俺を射ぬく




「信じて、おります」

「――」

「必ず、この国を救ってくれると」




微かに潤むその瞳を細めて

柔らかく微笑むグレイス




「私も共に戦います」




すると、腰から小さな剣を取り出してみせたグレイス

どこか不似合いなその姿に違和感を覚える




「――何を言って...グレイスは民達と共に避難を」

「隠れているだけなど、できませぬ」

「――」

「皆、戦っております。私も、この国を守りたいのです」



真っ直ぐに俺を見上げるその瞳

力強い眼差しが、彼女の決意の大きさを知る

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