My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
「もし――」
揺らがない瞳で俺を見つめていたグレイスが、小さく息を吐いて呟いた
微かな沈黙が俺達を包む
「もし、もう一度元のアネモスに戻ったら、一緒にまた森を歩いて下さいますか?」
伏せていた瞳をゆっくりと上げて、柔らかく微笑んだグレイス
透き通ったその笑顔が、どこか寂しさを帯びている
「――あぁ。必ず」
優しい未来を信じて
他愛も無い約束をする
「ふふ。約束ですよ?」
「あぁ。約束だ」
答える様に微笑んだ俺を見て、嬉しそうに笑うグレイス
胸に抱いていた剣をギュッと握りしめて、頷いた
「お気をつけて」
「グレイスも」
小さく膝を折った彼女に、もう一度微笑みかけて、真っ直ぐに続く廊下を駆けていく
優しい未来を信じて