My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
バタバタと長い廊下を駆けて、ようやく馬小屋に辿り着く
すると、既に着いていた父が俺の姿を見てニッコリと笑った
「アレン。準備はできたか」
「あぁ。すぐに出れるよ」
荷物を急いで馬に括り付け、勢いよく馬に飛び乗る
その瞬間、一度大きく鳴いた馬の首をなだめる様に優しく撫でた
「また、頼むぞ」
俺の相棒とも言える馬に言葉をかける
それに応える様にブルブルと顔を横に振った
夜の闇が深いうちに、この国を出なければ
ガスパルに見つかっては、この国を出る事もできなくなる
一度空に輝く月を見上げてから、手綱を引こうとした
その時――
「アレン。ゲル」
どこまでも透き通る声が耳に届いて、振り返る
すると、美しい銀の髪をなびかせたホリスが駆け寄ってきて、胸元から何かを取り出した
「これを持って行け」
「――これは?」
「少しの量で腹が膨れる。特にお前はここ最近何も食べていないだろう」
美しい緑の葉に包まれた物を俺に手渡したホリスが俺を睨みつける
その姿を見て、心が温かくなる
「ありがとう」
「よい」
ニッコリと微笑む俺を見て、いつもの様にどこか素っ気なく返事をするホリス