My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ


「ホリス」

「――何だ」



手に握られた食料を見つめながら、声を落とす



聞きたかった事

確かめたかった事




「ホリスは――俺が竜族の王子だと...信じているか?」




普通に考えて、この状況でこの国を出る事は、逃げると捉えられてもおかしくはない

絶望的なこの状況で、きっと逃げ出したい者もいるはず


ましてや、俺はこの国の者じゃない

例え国を捨てても、何の問題でもない



それに、滅びたと言われている竜族の王子だなんて

普通なら信じがたい



そんな俺の事を、信頼していてくれているのだろうか――




どこか長い沈黙が世界を覆う

重たく感じるその空気に、息が詰まりそうになった時




「信じている」




真っ直ぐに伸びた声が、再び時間を動かす

勢いよく伏せていた瞳を上げると、ホリスと目が合った
< 327 / 388 >

この作品をシェア

pagetop