My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
「アレン! 見えたぞ! キルトの国だ」
小高い丘に出て、眼下に広がる世界を指さして父が微笑む
その声に導かれる様に視線を眼下に向ける
その途端、目の前に広がる街を見て息を飲んだ
青く輝く海の上に浮かぶ国
大きな城を中心に広がる街はヴェントスよりも大きい
風に乗って香る潮の香りが、どこか懐かしくて、思わず頬が緩んだ
「とりあえず、王宮に向かおう」
一度大きく息を吸ってから、馬の首を国へと続く道へ向ける
大きく頷いた父を横目に馬を蹴る
胸に輝く、竜族の王家の石を握りながら
◇
石畳の坂を一気に駆け上がる
城下の人々は見慣れない俺達の姿を訝しげに見つめている
「そこの者っ!! 止まれ―――っ!!!」
どこまでも続くと思われた坂を上り終えると、跳ね橋に出た
すると、その前に剣を構えてこちらに威嚇する騎士の姿が目に入る
途端に馬の手綱を引いて、立ち止まった