My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ


「アレン! 見えたぞ! キルトの国だ」



小高い丘に出て、眼下に広がる世界を指さして父が微笑む



その声に導かれる様に視線を眼下に向ける

その途端、目の前に広がる街を見て息を飲んだ



青く輝く海の上に浮かぶ国

大きな城を中心に広がる街はヴェントスよりも大きい


風に乗って香る潮の香りが、どこか懐かしくて、思わず頬が緩んだ




「とりあえず、王宮に向かおう」



一度大きく息を吸ってから、馬の首を国へと続く道へ向ける

大きく頷いた父を横目に馬を蹴る



胸に輝く、竜族の王家の石を握りながら












石畳の坂を一気に駆け上がる

城下の人々は見慣れない俺達の姿を訝しげに見つめている




「そこの者っ!! 止まれ―――っ!!!」




どこまでも続くと思われた坂を上り終えると、跳ね橋に出た

すると、その前に剣を構えてこちらに威嚇する騎士の姿が目に入る



途端に馬の手綱を引いて、立ち止まった

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