My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ


「なぜなら、私達はその地から参りました」

「なんだと?」



大きな口でワインを煽った王が、俺の言葉を聞いて目を見開く

ポタリと床に落ちた真っ赤なワインが、血の様に見える




「アネモスは存在いたします。その名の通り、美しい光の国でございます」

「――」

「しかし、今その国は滅ぼされようとしています」

「どういう事だ」




床に跪いたまま俺を見下ろす王の目が微かに揺れる

きっと、この答えを薄々感じ取っているからであろう

そして、その表情から、この御方も恐れているのだと分かる




あの、悪魔の国を――





「ガスパルです」



その言葉を口にした瞬間、辺りがざわつく

一瞬のうちに恐怖に満ちた部屋

太陽が雲の中に隠れて、一気に部屋が暗くなる




「今、アネモスはガスパルの攻撃をうけています。滅びるのも、時間の問題かと」




自分の言葉に、胸がつまる

美しいあの国が、今にも息を止めようとしている

闇の中に沈もうとしている


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