My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
散りゆく者
「姫様」
どこか血の匂いが混ざる世界の端で、名を呼ばれる
閉じていた瞳をゆっくりと開けると、螺旋階段の入り口にホリスが立っていた
「やはり、ここにいらっしゃいましたか」
独り言の様にそう呟いて近づいてくるホリス
その表情はどこか疲れ切っている様にも感じる
「ホリス」
「――は。」
「お前も少し休め」
きっとホリスの事だから周りに気ばかり使って、自分は少しも休んでいないのだろう
昔から、そういう男だった
「――休んでおります」
「嘘を言え。私には分かるぞ」
「――」
「お前は本当に昔から変わらないな――いつも自分の事は後回しにして」
「その様な事...」
「いいから休め」
小さく首を振ったホリスを制する様に、言葉を落とす
すると口を噤んだホリスが、微かに瞳を伏せてから私の隣に腰かけた
途端に柔らかい風が頬を撫でる
その柔らかさが、どこか現実からかけ離れている様に感じた