My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
◇◇◇
「竜族の王子が生き残っていたと聞いて、驚きました」
キルトの王宮の一室に、各国の王や騎士団の長が集まっていた
皆揃って、驚きの言葉と共に半信半疑な目で俺を見ている
そんな視線の中、胸元に仕舞ってあった石を前に掲げる
炎の様に真っ赤に燃える、竜族の王家の石
そこに彫られた、騎士達の頂点の証である紋章
それを見て、皆目を見開いた
「それはっ!! 伝説のイグニスの石!」
「イグニス!? あの竜の牙から造られたという!?」
「間違いない。――それにあれは、竜族王家の紋章だ」
ザワザワと部屋の中がざわつく
そして、俺の瞳を見た男が再び息を飲んだ
「黄金の...瞳」
その声を聞いて、部屋の中に沈黙が訪れる
大勢の瞳が俺の姿に注がれる
その姿を見つめ返しながら、ゆっくりと口を開いた
「我が王国は一度滅びた。私自信、自らが王家の生き残りだと知ったのは、つい先日の事だ」
「――」
「だが、この体に流れる血は変わらない」
父さんのおかげで、ここまで穏やかに過ごしてこられた
竜族の王子が生き残っていると分かれば、きっとガスパルに命を狙われた
そして、この命を利用しようと多くの国からも狙われただろう
だから、父さんには感謝している
それでも、やはり俺は竜族だと思う
この体に流れる血の運命に逆らう事はできない
どんな事があっても、巡り巡ってこうやって戦いの場に出る事になる
それでも、俺はいいと思っている
大切な何かを守る術を持つ事ができるのだから
だったら、この身すべてを捧げよう
俺の運命もすべて受け入れよう
例え血の海に立つ事になろうとも
どこまでも追ってくる影があろうとも
俺は1人じゃないと思えるから