My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ



磨き終えた剣をじっと見つめる

昔から何故か、この時が一番心を落ち着かせる

今思えば、やはり竜族の血がこの体に流れている故かもしれないと思う



徐々に白み始めた世界にゆっくりと目をやると、王宮から見える山々が色を取り戻し始めていた




「――朝か」



小さくそう呟いて、磨き終えた剣を納める

すると




「アレン様」




部屋の扉の外から聞きなれた声がした

入る様に促すと、扉を開けて頭を下げた騎士が言葉を落とす




「――兵の準備ができました」




その言葉に小さく頷いて、部屋を出る

どこか冷たい空気が肌をさす

でも、この痛みはなにも冬の空気だけじゃない

広場に集まった多くの騎士達の覇気だ



ここまでの道のりは決して簡単なものではなかった

滅びたとされる竜族の生き残りだと息巻いている若造がいると、初めは俺の招集にも首を縦に振らない国が多かった


無理もない

今頃になって生き残りが現れるなど、ありえない話だ



そんな国には直に出向き、招集を訴えた


好奇の視線と

信じられないと目を見開く国王達


それでも、竜族の紋章の入った王家の石と

この体に流れるグラディウス家の証でもある、黄金の瞳を見て、みんな声を落とした




――竜族の生き残りだ、と



< 354 / 388 >

この作品をシェア

pagetop