My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
灯
磨き終えた剣をじっと見つめる
昔から何故か、この時が一番心を落ち着かせる
今思えば、やはり竜族の血がこの体に流れている故かもしれないと思う
徐々に白み始めた世界にゆっくりと目をやると、王宮から見える山々が色を取り戻し始めていた
「――朝か」
小さくそう呟いて、磨き終えた剣を納める
すると
「アレン様」
部屋の扉の外から聞きなれた声がした
入る様に促すと、扉を開けて頭を下げた騎士が言葉を落とす
「――兵の準備ができました」
その言葉に小さく頷いて、部屋を出る
どこか冷たい空気が肌をさす
でも、この痛みはなにも冬の空気だけじゃない
広場に集まった多くの騎士達の覇気だ
ここまでの道のりは決して簡単なものではなかった
滅びたとされる竜族の生き残りだと息巻いている若造がいると、初めは俺の招集にも首を縦に振らない国が多かった
無理もない
今頃になって生き残りが現れるなど、ありえない話だ
そんな国には直に出向き、招集を訴えた
好奇の視線と
信じられないと目を見開く国王達
それでも、竜族の紋章の入った王家の石と
この体に流れるグラディウス家の証でもある、黄金の瞳を見て、みんな声を落とした
――竜族の生き残りだ、と