My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ

小さく息を吸って、前を見据える

風のなびく音だけが耳に届く




「この世界は今、闇に包まれている」




そんな世界に俺の声が静かに響く


どこまでも

どこまでも




「美しい森は死に。湖は枯れ、世界から光は無くなった」




今も目を閉じれば浮かぶ


血の海に沈む騎士達

燃えさかる森

枯れ果てた湖

光の射さない、暗黒の世界



「このままでは世界は闇に落ちてしまう」



次第に朝日が山から世界を照らし始める

白んでいた世界が色を取り戻す

その光の中に、剣を照らしだした




「今こそ立ち上がる時だ!! 続け! 兄弟達よ!! 再び世界に光を取り戻すのだっ!!」

「おぉぉぉぉぉ――!!」

「目指すは、光の国アネモス!! 王国を救うのだ!!」

「おぉぉぉぉ―――!!」




地響きと共に馬を蹴る

体中に響く怒涛の音と共に、光の中に飛び込んでいく




どうか、間に合ってくれ






「待ってろ、レイア」





呟いた言葉は、光の中に消えた



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