My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ


「呼んでいたみたいだけど、どうした?」




グレイスの後ろ姿を見届けてから、再びレイアに向き直る

すると、ニッコリと微笑んだ彼女が俺から離れて滝の側まで歩いていく




そして辿り着いた1つの石版の前

そこに彫られた文字に目を落とす

すると




「――ホリスの墓だ」




俺の隣で石版を見下ろしながら、レイアが小さく呟いた




「グレイスが花を摘んできてくれた」

「――」

「一緒に供えよう」




そう言って、どこか悲しそうに微笑んだレイア

そして、小さな籠に入った花を石版の上にゆっくりと供えた




目を閉じて、手を合わせるレイアの隣に並んで

同じ様に、目を閉じる



浮かぶのは、あの銀色の髪

一緒に空を見よう。と約束したあの言葉




ゆっくりと瞳を開けると、同じ様に目を開けたレイアと目が合う

すると、俺の胸に体を預けた彼女




「ホリスから、アレンとゲルに伝言がある」

「伝言?」




突然そう言ったレイアの顔を覗き込んで問いかける

すると、小さく頷いたレイアが俺を見上げて柔らかく微笑んだ




「出会えて、よかった。と」




その言葉を聞いて、胸が熱くなる

彼と過ごした日々が走馬灯の様に甦る

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