My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ
「母様の様に...なりたかったのだ」
ポツリと呟いた言葉は、頼りなく風にさらわれる
一瞬アレンに届いていないかもしれないと不安になって、伏せていた顔を上げると
アレンが優しく微笑んで、私を見ていた
その表情に、何故か心が羽の様に軽くなる
「私には‥まだこの国を背負う力がない」
あの地獄から、この国を救ったのは
私ではなく、民の力だ
私は何も――何もできなかった
国を守って散っていった
父様や母様、兄様の様にはなれなかった
「母様の様に、なりたかった」
もう一度呟いた言葉が涙で揺れそうで
ぐっと両手に力を込める