My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ




「母様の様に...なりたかったのだ」



ポツリと呟いた言葉は、頼りなく風にさらわれる

一瞬アレンに届いていないかもしれないと不安になって、伏せていた顔を上げると

アレンが優しく微笑んで、私を見ていた



その表情に、何故か心が羽の様に軽くなる





「私には‥まだこの国を背負う力がない」



あの地獄から、この国を救ったのは

私ではなく、民の力だ



私は何も――何もできなかった



国を守って散っていった

父様や母様、兄様の様にはなれなかった




「母様の様に、なりたかった」



もう一度呟いた言葉が涙で揺れそうで

ぐっと両手に力を込める

< 90 / 388 >

この作品をシェア

pagetop