My Precious ~愛する人よ~ Ⅱ


痛いくらいの静寂が俺達を包む

そして




「――‥民を守ってくれた事。感謝している」




突然開いた口から零れた言葉に、思わず目を見張る

まさか、ホリスからそんな言葉が聞けるとは思っていなかったから




「姫の笑顔を、取り戻してくれた事もだ」




驚く俺を置いて、またもや驚く言葉を落とした彼に最早唖然とする


すると、ホリスが目を伏せたまま小さく呟いたのを見る

木の葉の揺れる音に掻き消されそうな程、小さな声が聞こえた




「私にはできなかった」

「――」

「私では、ダメだった」




その言葉の裏に、微かに燃える赤を見る

俺の心の中にある

真っ赤に燃える、あの赤を


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