アイスブルー(ヒカリのずっと前)
ふと前を見ると、道を下った遠方の街灯の下、結城が立っているのが見えた。
ナツキと一緒だ。
短いスカートから、まっすぐで細い足が見える。
拓海は思わず立ち止まって、道の暗がりへと退いた。
何か二人で話している。顔の表情までは見えないけれど。
なんだろう。
ドキドキする。
ナツキが何やら怒って、結城を責めているように見えた。
結城は冷静だ。
街灯の下、二人は少しもめて、ナツキが結城から離れようと顔を背ける。
結城はナツキの手首を引き寄せ、もう片方の手でナツキの頭を後ろから支え、身体をかがめてキスをした。
ナツキはそのまましばらく身動きせずにいたが、両手を結城の首にのばし、二人の影が一つになる。
拓海は胸に手を当て、その光景から目を離すことができなかった。
二人は唇を重ねながら、互いの身体に手を回し、それからやっと二つの影に戻った。
結城はナツキの髪の乱れを直し、それから指でナツキの唇を触った。
二人は顔を再びよせ、何かを話し、そして駅の方向へ身体を向け歩き出した。
拓海は二人の背中を目で追いながら、固まって動けなかった。
「なんか、映画を見てるみたい」
拓海はそう声に出して行った。
胸がどきどきして、気まずい気持ちでいっぱいだった。
「見なきゃよかった」
拓海はそうつぶやくと、薬を買いに、ゆっくりと歩き出した。