アイスブルー(ヒカリのずっと前)
女性が自分の敷地へ戻って行くのを眺めた。
昇ってくる太陽が、女性の影を長く作る。
言われてみると、女性に身覚えがあった。
そういえば、しきりに同情するような様子を見せていたっけ。
でも根掘り葉掘り聞こうとされて、嫌な思い出もあった。
「まだ住んでたんだ」
鈴音はそういうと門をあけて中に入った。
庭からあがって、縁側に出してあった麦茶を手に取り、飲み干す。
「お子さんとか? まさかね、大きすぎるもの」
先ほどの女性の言葉が頭で繰り返される。
歳の離れた若い男の子を引っ張り込んでいるとでも思われたのだろうか。
「心外」
鈴音は一人むくれた。
でも。
言われてみればやはり、不自然に見えるのだろう。
これからも毎日、あの子が来る。
加えて、一緒に暮らしたいだなんて、馬鹿みたいなこと……。
「なんて言われるか、わかったもんじゃない」
鈴音は溜息をついた。
洗面所で顔を洗って、さっぱりする。
鏡に写る自分を見た。
歳の割には若く見えると思う。
でもやはり、十代にはとうてい見えない。
「当たり前!」
鈴音はちょっとでもそんなことを考えた自分が恥ずかしくなり、タオルで顔を隠した。
「ごはん、食べよ」
鈴音は自分の動揺を隠すために、わざと大きな声で言った。