アイスブルー(ヒカリのずっと前)
居間に戻り、ふと庭先に目をやると、驚いて立ち止まった。
思わず「わあ!」と大きな声が出る。
「おはようございます」
結城が頭を下げた。
鈴音はしばらく呆然と結城を見て、
それから慌てて「おはようございます」と答えた。
「すいません、勝手に入っちゃって。開いてたから」
結城は笑顔を見せて、そう言った。
「あ……ああ、いいのよ。どうぞ」
鈴音はそういって縁側に座布団を持ってくる。
「失礼します」
結城は人当たりの良い表情で、その座布団に座った。
髪が伸びた。
不思議な髪色。
太陽に当たると、赤く見える。
きれいな肌。
夏なのに、白い。
つややかで、光っている。
何よりも印象的な瞳。
大きくて、まつげが長い。
こんなにきれいな男性を見たのは初めてかもしれない。
女優にもいないだろう。
独特の雰囲気。
「こんな早い時間に、連絡もせず突然おしかけて、すみませんでした」
「えっと、いいのよ。で……あの、拓海君は早くても九時頃にしか来ないけれど」
鈴音は結城の側に正座をした。
「いいんです。拓海に用事があった訳じゃないから」
結城が答える。
鈴音は結城の顔を見る。
目が離せないほど、美しい。
「僕の顔に何かついてます?」
結城が微笑んで問いかけた。
「いえ、ああ、ごめんなさい。ちょっとびっくりして」
鈴音はそう言い繕った。
初めて結城と会ったときのことを思い出す。
話しかけづらい印象。
寄ってくるな、と言わんばかりの強い視線。
今日はそんな雰囲気ではなかった。
むしろとても親しげだ。
あまりにも雰囲気が異なるので、鈴音は混乱した。