アイスブルー(ヒカリのずっと前)
そこに、ブーという、呼び鈴の音がした。
鈴音は顔を上げ、縁側から庭を覗き込む。
すでに太陽は沈み始めている。
オレンジ色の光が、人影を浮かび上がらせた。
けれど、誰だかわからなかった。
「はあい」
鈴音は布をテーブルに置き、玄関に出た。
玄関の明かりをつけ、サンダルをひっかけ、外に出る。
門の所に、一人の女性が立っていた。
顔は影になり、ぼんやりとしか見えない。
「どちら様ですか?」
鈴音は声をかけた。
人影は小さく頭を下げる。
鈴音は門のところまで、歩いて行った。
石畳を、サンダルのかかとが、カラカラと音を立てる。
門のところまで来ると、その女性が自分より同じか、少し年上だということがわかった。
「あの、何か?」
鈴音は笑顔で声をかけた。
「市田さんのお宅ですか?」
その女性は静かに問うた。
その声。
鈴音ははっとして、立ち止まった。
似てる。
そっくりだ。
「市田さんでいらっしゃいますか?」
女性が再度問う。
鈴音は「はい」と頷いた。
鈴音は門をあけ、女性を迎え入れる。
女性はうつむきがちに、鈴音の後に従った。