アイスブルー(ヒカリのずっと前)


ずっと鞄に入れっぱなしにしてある。

洗濯をして、丁寧にたたんで、ビニールに入れてある。



一学期最後のホームルームが終わり、開放感から生徒達が歓声をあげる。
拓海は机が空っぽなのを確認してから、立ち上がった。


結城が振り返り「帰る?」と声をかけた。

「ああ、うん」
拓海は曖昧に頷いた。


結城が鞄を抱えて、拓海の脇に立つ。


「お昼食べてく?」
結城が訊ねた。

「ああ、うん」
拓海はまた曖昧に頷いた。


それを聞いて結城が首を傾げる。
「なんか予定あるの?」

「いや……」
拓海は躊躇した。


鈴音のことはなぜだか知られたくなかった。


「俺、明日からびっちり夏期講習が入ってんだ」

「休みなし?」

「休みなし」
結城がうんざりというような顔をした。
「今日は最後の日。自由の」

「大げさ。大学に合格にしたら、自由になれるだろう?」
拓海は軽く笑いながら言った。

「まあね」
結城も笑った。

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