アイスブルー(ヒカリのずっと前)
「涼しいな」
結城が緑の生い茂る枝を見上げる。
「でもすぐに暑くなるよ。すごい坂だから」
拓海が言った。
「ふうん。なあ、なんでこっちあがって来たんだ?」
結城が振り返った。
「うん、ちょっと」
拓海はどう説明したらいいのかわからず言葉を濁した。
結城がいぶかしげな様子を見せる。
二人は息が切れてくる。
頭上を覆っていた枝はすぐになくなり、日陰が小さくなった。
二人は日陰を求めて道の脇に寄ったが、あまり意味がなかった。
坂を上りきって、二人は溜息をついた。
結城が「やばい」とつぶやいた。
「かき氷ほしい」
拓海はつぶやいて、それから二人で目を見て笑い合った。
道なりに歩く。
「蝉がうるさいな」
結城が顔をしかめた。
「夏だからしかたないよ」
拓海がこたえた。
「もっともなこと言うな」
結城が額の汗を拭いながら言った。
「あ、あそこ」
拓海が鈴音の家を見つける。
結城も家を見る。
「古い家だな」