アイスブルー(ヒカリのずっと前)
四
蝉がうるさい。
風鈴がなっている。
腕にあたる日差しが痛い。
横を見る。
三歳くらいの男の子が、縁側に座ってる。
キャラクターのプリントがついたタンクトップ。
青のストライプの半ズボン。
膝小僧はつるつる。
足をふらふらさせて、何やら一生懸命にしゃべってる。
汗をかき、真っ黒な髪がおでこに張り付いてる。
鈴音は手を伸ばして髪が目に入らないよう、撫で付ける。
手の甲で、柔らかくてまんまるな、ほっぺたを触る。
笑みがこぼれる。
「今日は、お庭で髪をちょきちょきしようか」
男の子は「いや」と言って横を向く。
「ちょき、いや」
鈴音は笑みを浮かべながら、仕方ないと溜息をつく。
台所から、祖母の声がした。
「すずちゃん、たっくん、すいかが冷えてるよ。持ってこうか?」