アイスブルー(ヒカリのずっと前)
しばらく二人に、なんとも言えない微妙な雰囲気が漂う。
「じゃあ、そうだ」
拓海が顔を上げて笑顔になる。
「カフェを開業するには何をしたらいいか、まず調べましょう」
「ああ、そうよね」
鈴音も笑顔になる。
「ネットは?」
拓海が言った。
「インターネット?」
「はい。コンピュータはどこですか?」
「ない」
「やっぱり」
拓海は声に出して笑った。
「すいません」
鈴音が今度は申し訳ない気持ちになった。
「じゃあ、本屋にいきましょう。駅前に割と大きな本屋がありますよね」
「そうね!」
鈴音は勢いよく立ち上がった。
拓海も立ち上がる。
「まって、戸締まりするから」
鈴音は縁側の窓を閉めた。
拓海は玄関のところでスニーカーをはいている。
動いていた空気がぴたりと止まって、とたんに気温が上昇したような気がする。
鈴音は玄関脇においてあった鞄を肩にかけ、家を出た。